ディー・クルー・テクノロジーズ Blog

bookmark_border変化するから伝わる

 投稿者: Setsuo Misaizu

こんにちは、美斉津です。

桜と言えば、ソメイヨシノが有名です。この種類は日本中どこに行っても見ることが出来るので、すごく繁殖力が高い木だと思ってました・・・が、実はソメイヨシノは種無しって知ってましたか。それじゃどーやって増えたかと言うと・・・人が増やしてきたそうです(それ以外ないですが。。。)

きれいな花を毎年咲かせるから、いつの頃からか日本人はソメイヨシノを植えてきたのです。

種が無いのにどうやって苗を手に入れるのかと言うと・・・”さし木?”で増やすそうです。繁殖力が高い”大島桜”などの根っこに、ソメイヨシノの若い枝をさして育てるそうです。今も外でハラハラと散っている大きな桜の根っこは、違う種類の桜だったなんて、ちょっとびっくりです。

毎年綺麗に咲く事を楽しみにしつつ、今回のネタに行きたいと思います。

アナログデータの閾値

僕たちは当たり前のように、データを送ったり、受信したりしています。そのデータは殆どがデジタルデータなので”1″と”0″の組合せで出来ています。

僕たちアナログ屋さんが先ず気にするのは、どこからが”1″で、どこからが”0″なのかを判断する閾値です。

同じ基板上にデータの送り先があるときは、あまり気にはしないのですが(速度が速くなると別です)、遠く離れた相手に信号を伝える時はだいぶ厄介になります。それは基準となる電圧(たとえばGND)が同じとは限らないからです。

“GNDは地球を通じて繋がっているから平気なのでは?”と思う方もいるかもしれませんが、地球をアースと呼んでGNDとするのは、いくら電流を取出しても(流し込んでも)電圧が変化しないからそのように呼んでいるだけで、横浜と大阪の地面の電圧が同じと言うわけではないのです。

例えば、横浜から大阪まで電線を引いて、横浜で1Vを接続したら、大阪で1Vって測定できるかって言うと・・・無理だと思います。

電圧で閾値検出する方法とは?

じゃあどうすんの言うと、一番簡単なのは電線を2本使うことです。どっちの線の電圧が高いかで”1”と”0”を区別します。

本当に横浜と大阪を2本の線で繋いで通信が出来るかと言うと・・・2本の電圧差をすごく大きくすれば出来るかもしれません。

でも、2本も線を使うなんてもったいと思いませんか? 特に線が高価だとなおさらです。そのような場合は、データに閾値の情報を混ぜて送ります。一番簡単なのは、データの平均値を閾値とする方法です。受信する側で入ってきた信号の平均値を検出し、これより大きいと”1”、小さいと”0”って判断します。こんな感じです。

しかしデータが変化しないと、閾値が分からなくなる

上の絵の場合、信号の平均値がおよそ0.5Vの場合で、うまく動作しています。しかし、うまく動作するためには制約があります。それは、”データが変化していること”です。データの変化が止まってしまうと・・・

の様に、平均値は徐々に動いていって、入力したデータと一致してしまいます。もうこうなってしまうと”1″、”0″の判断が出来なくなってしまいます。このようにならないためには、データは変化し続けることが必要です。

しかし、実際に送りたいデータは変化し続けてくれるとは限りません。ずっと”1″を送り続けたい時もあります。

データが変化しないときでも閾値を判別させられる?

そんなときは、”スクランブル”をかけます。戦闘機がスクランブル発進するわけでも渋谷の交差点を渡るわけでもないのですが、データを”ある法則にしたがって”ゴチャゴチャに”1”と”0”を混ぜてしまいます。こうした信号は”1″や”0″が連続していないので、受信した側で”1″と”0″を安定して判別できるようになります。

受信して判別したデータは、ふたたび”ある法則で”、”デ・スクランブル”しすることで、元に戻すことが出来ます。

信号を伝えるには、変化することが重要で、変化が止まると信号は正しく伝わらなくなるって事なのですが、これってアナログの回路だけではなく、人と人のコミュニケーションにも言えることなのでは、と思うこの頃です。

(2008-04-07 弊社匠ブログより転載)

ご参考)ディ―・クルーのディジタル信号処理ソリューション

bookmark_borderLOGって偉大

花粉症は冬の終わりから春のもの、という印象が強いですが、夏秋でも調子悪くなることがありませんか?実はイネやキクといった夏秋でも花粉を出す草花も原因になるので、春夏秋冬、一年通してリスクはあるものなのですね。

花粉症は体の免疫システムの暴走が原因と言われています。昔は色んな菌と戦っていた免疫システムが、清潔できれいな環境になったものだから、戦う相手を失ってしまい仕方なく花粉を攻撃して鼻や目がぐちゃぐちゃにする って言うことらしいです。

と言うことは、花粉症にならない僕の環境はあまりきれいではない?・・・複雑です。

LOG(指数)とは?

今回は”LOG”(指数)にちょっと触れてみたいと思います。

LOGって会話や操作の記録の”ログ”ではなくて、数学の関数に事なのですが、アナログに回路設計をしているとこのLOGに良く出くわします。数式でもLOGは頻繁に使いますし、良く耳にするdB(デシベル)はLOGの関数です。

グラフのLOGのすごさ

僕が一番良く使うLOGは、周波数特性を表すのに使うグラフで、横軸がLOGで書いてあります。

このグラフの(LOGの)何がすごいかと言うと、”0”が無いです。そして、ものすごく広い範囲を一枚にかけてしまう事です。

例えば・・・

のように、1から1e20までの周波数を1枚に書いてしまうことが出来ます。身の回りにある殆どの電子機器はこの範囲の周波数で動作しています。オーディオから始まって、非常に広い範囲を占めている電波を使っているラジオやテレビ、携帯電話。その先の赤外線領域は光通信で使われていますし、もっと先のX線はレントゲンやCTスキャンなどに使われています。

電子回路の世界で、1Hzというとほとんど直流といっていいほどの遅い周波数になり、ちょっと特殊な扱いになってきます。

終わりのない、世界のあらゆる周期を1枚で表す

でも周期的に変化するって事を考えると、一日は朝と晩の繰り返しだし、1年は春夏秋冬の繰り返しになるので、このまま左にLOGグラフを拡張していくことが出来て、ずっと左に広げていくと・・・・

ってなります。

時間を周波数(1/周期)をとして書いてみると”宇宙誕生:130億年前?”から始まって、”恐竜の時代:5億年前”から”氷河期:10万年前”、”文明誕生:4000年前”を経て、”春夏秋冬:1年”にたどり着きます。そして、1ヶ月、1時間を過ぎると今(1秒)になり、音、電波の世界になってきます。

文明誕生が4000年周期で繰り返されるかは分かりませんが、氷河期は再びやってくるなんて説もありますし、星は誕生と死を繰り返しているのは物理の常識だし、もしかしたら宇宙自体も誕生と崩壊を繰り返しているのかもしれないです。全ての事象が繰り返されるもので、ただその周波数(1/周波数)が違うだけって考えたら、宇宙誕生からX線まで、1枚のグラフにかけてしまうのです。

あと、宇宙誕生の直後には、大量のX線が放出された・・・なんて記事を読んだ覚えがあります。

“0”がないLOGのグラフは実は、右と左が繋がっているのでは?? なんて思ったします。

いつ始まって、いつ終わるか分からない”時間”を表現するには、LOGが都合いいのかもしれないです。

(2008-03-13 弊社匠ブログより転載)

bookmark_border3種の部品

今回は僕たちが回路設計に使う部品とその性質にちょっと触れてみたいと思います。

どんなに複雑な動きをするデバイスでも回路でも、3種類の部品と2種類の電源で成り立っています。

3種類の部品とは、抵抗、コンデンサ、インダクタで、2種類の電源とは電圧源と電流源です。

スーパーコンピューター(もうあまり誰も言わなくなってしまったけど)から携帯まで、電気回路はすべて、この5種類の部品に分解できます。トランジスタやFETはもちろん、水晶発信器もこれらの3種類の部品で等化モデルを作ります。

必要な計算式は、オームの法則のみです。

電圧=電流×抵抗

を知っていれば、ほとんどの事がわかります。抵抗しかないけどインダクタやコンデンサは?っていう方もいるかもしれませんが、インダクタやコンデンサは、周波数によって値が変わる抵抗なので、抵抗と同じ様に考えればいいのです。

抵抗   =周波数が変わっても抵抗値は変わらない。

コンデンサ=周波数が高くなると抵抗値が下がる。

インダクタ=周波数が低くなると抵抗値が上がる。

電子回路の中ではこの3種類の異なる性質も持つ部品達が、様々なドラマを繰り広げているのです。

共振回路はどうなる?

例えば、共振回路はこんな感じになっています。

電流源(I1,I2,I3)にコンデンサ(C1)、インダクタ(L1)のみと、これらを並列に繋いだ回路を比較してみます。

コンデンサの抵抗は周波数が高くなると小さくなるので、OUT_Cの電圧は右下がりの特性になり、逆にインダクタの抵抗は周波数と共に大きくなるので右上がりになります。(縦軸のdB?、なぜ直線? は別の機会に触れたいと思います)

並列回路はどうなる? 

それでは、並列に繋いだ回路はどうなるのでしょうか?

並列なので、抵抗の低い方が勝つ(の値に近くなる)です。
周波数が低い時はインダクタ(L2)が、周波数が高いほうはコンデンサ(C2)が勝ちで”へ”の字の特性になると思われます。

それでは交差している160KHz付近はどうなるのでしょうか?お互いに抵抗値が近いので、どっちが勝つとかいえない状況です。。。シミュレーション結果は次のようになります。

160KHz付近はインダクタもコンデンサも値が近くてお互いに譲らないので、”共振”が発生し、非常に高い抵抗値になります。

相反する性質を持っているインダクタやコンデンサをいっしょに使うことで、単体の性質を遥かに越えた性質を得ることが出来るのです。

抵抗を加えてみる

抵抗を忘れてました。抵抗も参加させると、こんな感じになります。

抵抗(緑の線)が共振(赤い線)の頭を抑えています。抵抗はインダクタやコンデンサが作る共振を制御することが出来ます。インダクタ(L2)とコンデンサ(C2)の喧嘩に抵抗(R2)が仲裁に入った感じです。

同じ部品を直列に繋いでみる

同じ部品を並列ではなくて、直列に繋いでみます。直列なので、抵抗値が高いほうが勝ちますから周波数が低い時はコンデンサが勝って、周波数が高い時はインダクタが勝ちます。仲裁に抵抗が入って。。こんな感じになります。

①インダクタが右上がりで、②コンデンサは右下がり、③抵抗は水平。④並列は低いほう、直列は高いほうが勝つ。

この法則を覚えておいて、回路部品を順番にグラフに書き加えていくと、どんなに複雑な回路でも周波数特性の概略が分かってしまうのです。

難しい計算(jωやダンピングファクタ、Qなど)も最終的には必要なのですが、”絵”で部品の性質を感覚的に知っておく方が楽しいし、実際の回路設計の現場では役に立つと思います。

(2008-02-17 弊社匠ブログより加筆転載)

bookmark_borderインピーダンスマッチング

D-CLUEには大きく分けて3分野のエンジニアが在籍しています。それはアナログデジタルファームの3分野です。
代表の石川は、D-CLUEを創立する時から、この異なる3分野のエンジニアを集めて会社を創りました。この異なる分野のエンジニアがそれぞれの分野の目線から、同じ問題に取組み、団結と「合わせミソ」で幾多の難題を解決してました。

異なる分野のエンジニアが一つの仕事に団結して取り組むためには、相手の分野の事を深くは理解はできなくても、ある程度、感覚的に分かっている事が必要なのではないかと思います。
私はアナログのエンジニアですが、アナログだけを分かっていれば済むかと言うと、そうでは無く、
デジタル回路が何をしているのか、ファームはどう制御しているか等をある程度分かっていないと、
団結して一つの仕事に取組めないのでは無いかと思います。

そんな背景もあり、今回のブログのテーマは、「アナログ回路を分かり安く説明して、デジタルやファームのエンジニアに感覚的に知ってもらうこと」です。

初めての方もいらっしゃるかも知れないので、簡単な自己紹介をさせて頂きます。

私は美斉津と申します。

1986年に電気工学科を卒業したのですが、アナログ電子回路は避けて通って来たので、卒論は、今となっては名前すら見る事がなくなった「FORTRAN」を使った光線追跡プログラムに関するものでした。そんな学生でしたので、アナログの世界には会社に入ってから出会いました。
そして、アナログの世界の魅力に取り付かれて、気が付けば長い年月が過ぎていました。

インピーダンスマッチングとは

今回は、「インピーダンスマッチング」について触れたいと思います。

デジタル回路の動作速度が速くなると、今まで経験した事のない問題に直面します。
なぜか信号が化ける、書いたはずのデータが書けてない、時々誤動作する、などの頭の痛い問題です。
その原因のひとつとして「インピーダンスマッチング」があげられます。
RFなどの高周波が絡む仕事をしている方にとっては馴染みの深い単語ですが、デジタル回路を中心に仕事をされている方には、非常に分かり難いのではないかと思います。
学術的には「伝送路の特性インピーダンスと終端抵抗のインピーダンスが整合している事」と書いてあるのですが・・・何を言っているのか理解し難いものがあります。

インピーダンス不整合とは

インピーダンスがマッチングしないと・・・何が問題なのか?

インピーダンスが整合(つまり一致)していないと何が起こるかと言うと、「反射」が起こります。
つまり、配線やプリント版のパターンを通ってきた大事な信号が反射してしまい、エラーや誤動作を引き起こします。

なぜ反射が起きるのか

それでは、なぜ反射するかというと・・・

しっかりと説明するには難しい計算式を沢山使わないといけないので、簡単な例で説明しようと思います。長いロープ(出来れば柔らかいほうがいいです)を用意して床に一直線に伸ばして置きます。
片方を誰かに足で踏んでもらっておいて、反対側の端を持って”1”を伝えるつもりで勢いよく持ち上げてすぐ下げます。そうすると、ロープに”山”ができ、これが反対の端に向かって走って行くのが見えると思います。反対の端に届いた時に何が起きるかよく観察してください。
“小さい山”がちょっと戻ってきませんでしたか? これが”反射”です。

今まで、ロープを伝ってきた信号の”山”が急にロープが無くなってしまうので、行き場を失って戻ってきたのです。つまり、今まで信号を伝えてきた媒体が急に変わり、片側には山があるのに、もう片側は平たんな状態になってしまい、“連続である”という自然現象の原則と矛盾します。この矛盾を解消するために、反対方向の山が発生します。これが反射が生じる理由です。
この現象は、電気信号だけではなく”音”や”光”でも一緒です。今まで飛んできた媒体の空気とは違う山に、声が当たって反射したのが”やまびこ”です。

反射を発生させないために必要なこと

では、反射を発生させないようにするには・・・

媒体が変わったと気づかせないように、つまり、ロープが切れていないように見せればいいのです。
具体的には、ロープの端を足で踏んで固定しないで動くようにしてやれば、反射は起きなくなります(と思います)。
アナログ回路設計は難しいとか、高速伝送は理解しにくいとか良く言われます。
でも、アナログ回路は我々身の回りに「自然」という非常に優れたお手本を真似をしているだけなのでは? スケール(時間軸を含めて)が違うだけでないか?と感じる事がよくあります。
“アナログ”の語源は、英語のanalogy(類似性、類似学)で、”類似している”から連続していると言う意味と変化したと聞きます。

ロープのように”連続”した信号を扱うアナログ回路設計

つまり、連続した信号を扱うからアナログ回路なのですが、連続しているのは信号だけではなく、電子回路で起きている現象が我々の回りの自然と密接な関係にあり、まさに連続しているのでは?と感じている今日この頃です。感覚的な説明になってしまいましたが、次回は具体的な回路を使い、波形の歪み方などを含めて、インピーダンスマッチングを説明したいと思います。

(2008/1/8 弊社 匠ブログ記事より加筆転載)