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bookmark_border反射 (3)

前回までは“反射”がどの様に波形に影響を与えるか過渡解析を使って説明をしてきました。今回は小信号解析(AC解析)も使ってもう少し反射について説明したいと思います。

過渡解析を使わず、AC解析を用いる

線形解析ができるのか確認

“反射”と言うと進行する波と反射する波があり、それらが重なり合うので、なんとなく線形解析が出来ないような気がするのですが、どうなるか確認してみたいと思います。

図1

前回使った回路を図 1に示します。信号源インピーダンスRs=40Ω(多重反射を意図的に発生させます)で、終端側の抵抗Rtm=50G(Open)、寄生容量C0=10pFとしています。また、各伝送路超は50cmとしていますので、全部で2mの長さになります。電圧源V0を信号源として、Voutまでの周波数特性を計算した結果を次に示します。

図2

17MHz辺りでピーキングが発生して、それが繰り返されているように見えます。

横軸をリニアに変更した結果を下に示しました。

図3

横軸をリニアにすると、同じ形の繰り返しになっていることがよく分かります。周波数は35MHzで形も正弦波のように見えます。

横軸が時間であれば、よくある波形なのですが、このグラフの横軸は周波数です。

周波数特性を知る

あまり見ない形になっているので、これで良いのか少し不安では有りますが、気にせず先に行こうと思います。

先ずは35MHzと言う数字はどこから来ているのか考えてみることにします。 35MHzの一周期は・・・ です。

伝送路の長さは50cm×4=200cm。伝送路の計算に用いている遅延は70psec/cmとしています(普通のFR-4はこのくらいの遅延になります)。 なので、信号の遅延量は、70ps×200cm=14nsecとなります。14nsecと言うことは の信号ならちょうど一周期分がぴったり伝送路に入ります。

と成ると、 周期では35.7MHzと成り、周期では17.9MHzと成ります。

図4
図5

周波数特性でピークと成る周波数は伝送路の中に入れると、“腹”が反対側に表れ、反対に谷となる周波数は、“節”が伝送路の反対側に現れる法則があるようです。 ときどき“反射の影響が出るのはどのくらいの周波数からか?”と聞かれることがあるのですが“伝送路長が 波長になる周波数からかな”と、答えていました。

が図5を見ると、 “伝送路長が 波長になる周波数から。場合に依っては 波長から”と答えないといけなかった事が分かってしまいました(大汗)

例えば、10cmのストリップラインをFR-4基板に引いたときは・・・

この周波数あたりから利得特性に盛り上がりが現れ、358MHzではピークとなるので、180MHz辺りの周波数では波形に影響が出てくると考えるべきです。

試しに反射を線形解析で解いてみる

ところで、周波数特性が分かっていると言うことは、逆フーリエ変換すれば時間軸波形を求めることが出来るかもしれません。“反射”は周波数特性やフーリエ変換と言った線形解析では解けないというイメージがあるのですが、試してみたいと思います。

入力波形

図6

この波形をフーリエ変換すると下記のような周波数成分に分解できます。

図7

この各周波数成分に下の周波数特性を掛け算して・・・

伝送路の周波数特性

図8

その結果を逆フーリエ変換すると・・・下のような波形になります。

逆フーリエ変換による波形出力

出力波形

図9

過渡解析と逆フーリエ変換による波形の違い

同じ事を過渡解析で計算してみると、

図10

と成って、ほぼ同じ波形を得ることができました。注目すべきは、1個目のパルスです。

周波数特性+逆フーリエ変換を使った結果では1個目のパルスから歪んでいますが、過渡解析は最初のパルスは歪んでいません。どちらの結果を信じれば良いのでしょうか。

ひずみが発生する原因は多重反射です。パルスが伝送路内に入ってまだ時間が経過してない間は多重反射が起きていない(反射がまだ発生していない)ので、最初のパルスは歪まずに到達できるのです。この辺まで計算してくれる過渡解析の方がより現実に近い計算結果を示していると言えます。

しかし、過渡解析には時間がかかります。伝送路が複雑になると指数関数的に計算時間が増えていきます。反面、周波数特性(AC解析)+逆フーリエ変換は伝送路の複雑でも殆ど計算時間は変わらないです。最初のパルスを無視すれば、十分使えるのではないかと思います。

今回は“反射”を過渡解析を使わないで計算する方法を紹介しました。

次回は、反射+線形解析となると避けては通れないSパラメータに触れたいと思います。

bookmark_border変化するから伝わる

 投稿者: Setsuo Misaizu

こんにちは、美斉津です。

桜と言えば、ソメイヨシノが有名です。この種類は日本中どこに行っても見ることが出来るので、すごく繁殖力が高い木だと思ってました・・・が、実はソメイヨシノは種無しって知ってましたか。それじゃどーやって増えたかと言うと・・・人が増やしてきたそうです(それ以外ないですが。。。)

きれいな花を毎年咲かせるから、いつの頃からか日本人はソメイヨシノを植えてきたのです。

種が無いのにどうやって苗を手に入れるのかと言うと・・・”さし木?”で増やすそうです。繁殖力が高い”大島桜”などの根っこに、ソメイヨシノの若い枝をさして育てるそうです。今も外でハラハラと散っている大きな桜の根っこは、違う種類の桜だったなんて、ちょっとびっくりです。

毎年綺麗に咲く事を楽しみにしつつ、今回のネタに行きたいと思います。

アナログデータの閾値

僕たちは当たり前のように、データを送ったり、受信したりしています。そのデータは殆どがデジタルデータなので”1″と”0″の組合せで出来ています。

僕たちアナログ屋さんが先ず気にするのは、どこからが”1″で、どこからが”0″なのかを判断する閾値です。

同じ基板上にデータの送り先があるときは、あまり気にはしないのですが(速度が速くなると別です)、遠く離れた相手に信号を伝える時はだいぶ厄介になります。それは基準となる電圧(たとえばGND)が同じとは限らないからです。

“GNDは地球を通じて繋がっているから平気なのでは?”と思う方もいるかもしれませんが、地球をアースと呼んでGNDとするのは、いくら電流を取出しても(流し込んでも)電圧が変化しないからそのように呼んでいるだけで、横浜と大阪の地面の電圧が同じと言うわけではないのです。

例えば、横浜から大阪まで電線を引いて、横浜で1Vを接続したら、大阪で1Vって測定できるかって言うと・・・無理だと思います。

電圧で閾値検出する方法とは?

じゃあどうすんの言うと、一番簡単なのは電線を2本使うことです。どっちの線の電圧が高いかで”1”と”0”を区別します。

本当に横浜と大阪を2本の線で繋いで通信が出来るかと言うと・・・2本の電圧差をすごく大きくすれば出来るかもしれません。

でも、2本も線を使うなんてもったいと思いませんか? 特に線が高価だとなおさらです。そのような場合は、データに閾値の情報を混ぜて送ります。一番簡単なのは、データの平均値を閾値とする方法です。受信する側で入ってきた信号の平均値を検出し、これより大きいと”1”、小さいと”0”って判断します。こんな感じです。

しかしデータが変化しないと、閾値が分からなくなる

上の絵の場合、信号の平均値がおよそ0.5Vの場合で、うまく動作しています。しかし、うまく動作するためには制約があります。それは、”データが変化していること”です。データの変化が止まってしまうと・・・

の様に、平均値は徐々に動いていって、入力したデータと一致してしまいます。もうこうなってしまうと”1″、”0″の判断が出来なくなってしまいます。このようにならないためには、データは変化し続けることが必要です。

しかし、実際に送りたいデータは変化し続けてくれるとは限りません。ずっと”1″を送り続けたい時もあります。

データが変化しないときでも閾値を判別させられる?

そんなときは、”スクランブル”をかけます。戦闘機がスクランブル発進するわけでも渋谷の交差点を渡るわけでもないのですが、データを”ある法則にしたがって”ゴチャゴチャに”1”と”0”を混ぜてしまいます。こうした信号は”1″や”0″が連続していないので、受信した側で”1″と”0″を安定して判別できるようになります。

受信して判別したデータは、ふたたび”ある法則で”、”デ・スクランブル”しすることで、元に戻すことが出来ます。

信号を伝えるには、変化することが重要で、変化が止まると信号は正しく伝わらなくなるって事なのですが、これってアナログの回路だけではなく、人と人のコミュニケーションにも言えることなのでは、と思うこの頃です。

(2008-04-07 弊社匠ブログより転載)

ご参考)ディ―・クルーのディジタル信号処理ソリューション

bookmark_borderLOGって偉大

花粉症は冬の終わりから春のもの、という印象が強いですが、夏秋でも調子悪くなることがありませんか?実はイネやキクといった夏秋でも花粉を出す草花も原因になるので、春夏秋冬、一年通してリスクはあるものなのですね。

花粉症は体の免疫システムの暴走が原因と言われています。昔は色んな菌と戦っていた免疫システムが、清潔できれいな環境になったものだから、戦う相手を失ってしまい仕方なく花粉を攻撃して鼻や目がぐちゃぐちゃにする って言うことらしいです。

と言うことは、花粉症にならない僕の環境はあまりきれいではない?・・・複雑です。

LOG(指数)とは?

今回は”LOG”(指数)にちょっと触れてみたいと思います。

LOGって会話や操作の記録の”ログ”ではなくて、数学の関数に事なのですが、アナログに回路設計をしているとこのLOGに良く出くわします。数式でもLOGは頻繁に使いますし、良く耳にするdB(デシベル)はLOGの関数です。

グラフのLOGのすごさ

僕が一番良く使うLOGは、周波数特性を表すのに使うグラフで、横軸がLOGで書いてあります。

このグラフの(LOGの)何がすごいかと言うと、”0”が無いです。そして、ものすごく広い範囲を一枚にかけてしまう事です。

例えば・・・

のように、1から1e20までの周波数を1枚に書いてしまうことが出来ます。身の回りにある殆どの電子機器はこの範囲の周波数で動作しています。オーディオから始まって、非常に広い範囲を占めている電波を使っているラジオやテレビ、携帯電話。その先の赤外線領域は光通信で使われていますし、もっと先のX線はレントゲンやCTスキャンなどに使われています。

電子回路の世界で、1Hzというとほとんど直流といっていいほどの遅い周波数になり、ちょっと特殊な扱いになってきます。

終わりのない、世界のあらゆる周期を1枚で表す

でも周期的に変化するって事を考えると、一日は朝と晩の繰り返しだし、1年は春夏秋冬の繰り返しになるので、このまま左にLOGグラフを拡張していくことが出来て、ずっと左に広げていくと・・・・

ってなります。

時間を周波数(1/周期)をとして書いてみると”宇宙誕生:130億年前?”から始まって、”恐竜の時代:5億年前”から”氷河期:10万年前”、”文明誕生:4000年前”を経て、”春夏秋冬:1年”にたどり着きます。そして、1ヶ月、1時間を過ぎると今(1秒)になり、音、電波の世界になってきます。

文明誕生が4000年周期で繰り返されるかは分かりませんが、氷河期は再びやってくるなんて説もありますし、星は誕生と死を繰り返しているのは物理の常識だし、もしかしたら宇宙自体も誕生と崩壊を繰り返しているのかもしれないです。全ての事象が繰り返されるもので、ただその周波数(1/周波数)が違うだけって考えたら、宇宙誕生からX線まで、1枚のグラフにかけてしまうのです。

あと、宇宙誕生の直後には、大量のX線が放出された・・・なんて記事を読んだ覚えがあります。

“0”がないLOGのグラフは実は、右と左が繋がっているのでは?? なんて思ったします。

いつ始まって、いつ終わるか分からない”時間”を表現するには、LOGが都合いいのかもしれないです。

(2008-03-13 弊社匠ブログより転載)