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システムLSIのブレイクスルー技術① 動的電圧周波数スケーリング(DVFS)(1)

久々にシステムLSI記事を更新します。今回は動的電圧周波数スケーリング(DVFS)の概要についてお伝えします。

DVFSとは

動的電圧周波数スケーリング(Dynamic Voltage and Frequency Scaling, DVFS)は、プロセッサの処理量(負荷)の大小に応じて、電源電圧およびクロック周波数を動的(適応的)に切り替える技術です。これにより、必要な性能を維持しつつ、消費電力を最適化し、発熱を抑えることができます。

このDVFSによるクロック周波数/電源電圧の動的切り替えについて、表1に示します。

表1 DVFSのクロック周波数/電源電圧動的切り替えとアプリケーション

各種システムLSI(SoC)やプロセッサでは低消費電力化を図るために動的電圧周波数スケーリング(DVFS)が広く導入されています。例えば、SoCの負荷が低いときには動作周波数及び電源電圧を下げ、低消費電力化を図ります。一方、高負荷時には高性能を必要とするアプリケーションに対して、周波数及び電源電圧を上げて高速処理を可能にします。DVFSは負荷の大小に応じて動的に最適な電圧/周波数を割り当て、低消費電力化を図る手法です。

各クロック周波数/電圧における具体的なアプリケーションは概ね下記の通りです。

2GHz/1.2V:AIモデルの学習や推論、ゲーム、ビデオ編集、画像認識、画像生成、画像処理タスク(高解像度)など、高負荷の作業時に切り替えます。
1.5GHz/1V:自然言語処理や音声認識など、中程度の負荷の作業時に切り替えます。
0.8GHz/0.5V:画像処理タスク(低解像度)、長時間かけて良い推論、Office作業、Web閲覧、スリープモードなど、低負荷の作業時に動的切り替えを実施します。

DVFSで用いられている負荷検出手段(MPUの例)

MPUにおいてDVFSで用いられている負荷検出手段を表2に示します。DVFSはMPUのみならず、モバイルプロセッサ、GPU, ECU 等で広く実用化されています。

表2 DVFSで用いられている負荷検出手段(MPUの例)

各半導体企業のソリューション例

各半導体企業が得意なアプリケーション、ハードウェアの競争力を高めるDVFS技術を提供しています。それぞれ簡単に説明します。

DVFSの種類概要
NVIDIA 「GPU Boost」GPUの電力管理を実現のための技術で、一部のGPUシリーズに搭載されています。
AMD GPU 「PowerTune」AMDの「PowerTune」は、エネルギー消費の削減に加え、コンピュータの冷却によって発生する騒音レベルを下げ、モバイルデバイスのバッテリー寿命を延ばすのに役立ちます。(wikipedia)
Intel MPU, GPU「DVFS」Intelは、MPU(マイクロプロセッサユニット)およびGPU(グラフィックスプロセッサユニット)においてDVFS技術を採用しています。これにより、プロセッサの動作周波数と電圧を動的に調整し、効率的な電力管理を実現しています。
Appleスマホ用プロセッサ Aシリーズ「DVFS」AppleのAシリーズプロセッサもDVFS技術を活用しています。これにより、iPhoneやiPadのパフォーマンスを最適化しつつ、バッテリー寿命を延ばすことができます。

DVFSは、現代のプロセッサにおいて不可欠な技術であり、各企業が独自のソリューションを提供しています。これにより、パフォーマンスと電力効率のバランスを取ることが可能となり、ユーザーにとって快適な使用体験を提供します。

次回はDVFSのブロック図、及び動作原理についてご説明します。

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