今回は僕たちが回路設計に使う部品とその性質にちょっと触れてみたいと思います。
どんなに複雑な動きをするデバイスでも回路でも、3種類の部品と2種類の電源で成り立っています。
3種類の部品とは、抵抗、コンデンサ、インダクタで、2種類の電源とは電圧源と電流源です。
スーパーコンピューター(もうあまり誰も言わなくなってしまったけど)から携帯まで、電気回路はすべて、この5種類の部品に分解できます。トランジスタやFETはもちろん、水晶発信器もこれらの3種類の部品で等化モデルを作ります。
必要な計算式は、オームの法則のみです。
電圧=電流×抵抗
を知っていれば、ほとんどの事がわかります。抵抗しかないけどインダクタやコンデンサは?っていう方もいるかもしれませんが、インダクタやコンデンサは、周波数によって値が変わる抵抗なので、抵抗と同じ様に考えればいいのです。
抵抗 =周波数が変わっても抵抗値は変わらない。
コンデンサ=周波数が高くなると抵抗値が下がる。
インダクタ=周波数が低くなると抵抗値が上がる。
電子回路の中ではこの3種類の異なる性質も持つ部品達が、様々なドラマを繰り広げているのです。
共振回路はどうなる?
例えば、共振回路はこんな感じになっています。
電流源(I1,I2,I3)にコンデンサ(C1)、インダクタ(L1)のみと、これらを並列に繋いだ回路を比較してみます。
コンデンサの抵抗は周波数が高くなると小さくなるので、OUT_Cの電圧は右下がりの特性になり、逆にインダクタの抵抗は周波数と共に大きくなるので右上がりになります。(縦軸のdB?、なぜ直線? は別の機会に触れたいと思います)
並列回路はどうなる?
それでは、並列に繋いだ回路はどうなるのでしょうか?
並列なので、抵抗の低い方が勝つ(の値に近くなる)です。
周波数が低い時はインダクタ(L2)が、周波数が高いほうはコンデンサ(C2)が勝ちで”へ”の字の特性になると思われます。
それでは交差している160KHz付近はどうなるのでしょうか?お互いに抵抗値が近いので、どっちが勝つとかいえない状況です。。。シミュレーション結果は次のようになります。
160KHz付近はインダクタもコンデンサも値が近くてお互いに譲らないので、”共振”が発生し、非常に高い抵抗値になります。
相反する性質を持っているインダクタやコンデンサをいっしょに使うことで、単体の性質を遥かに越えた性質を得ることが出来るのです。
抵抗を加えてみる
抵抗を忘れてました。抵抗も参加させると、こんな感じになります。
抵抗(緑の線)が共振(赤い線)の頭を抑えています。抵抗はインダクタやコンデンサが作る共振を制御することが出来ます。インダクタ(L2)とコンデンサ(C2)の喧嘩に抵抗(R2)が仲裁に入った感じです。
同じ部品を直列に繋いでみる
同じ部品を並列ではなくて、直列に繋いでみます。直列なので、抵抗値が高いほうが勝ちますから周波数が低い時はコンデンサが勝って、周波数が高い時はインダクタが勝ちます。仲裁に抵抗が入って。。こんな感じになります。
①インダクタが右上がりで、②コンデンサは右下がり、③抵抗は水平。④並列は低いほう、直列は高いほうが勝つ。
この法則を覚えておいて、回路部品を順番にグラフに書き加えていくと、どんなに複雑な回路でも周波数特性の概略が分かってしまうのです。
難しい計算(jωやダンピングファクタ、Qなど)も最終的には必要なのですが、”絵”で部品の性質を感覚的に知っておく方が楽しいし、実際の回路設計の現場では役に立つと思います。
(2008-02-17 弊社匠ブログより加筆転載)
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