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bookmark_borderLSI開発 エラーは無くならない

LSIを開発した後、そのLSIがきちんと動作しているかを確認することを僕たちは「評価」と呼んでいます。

この評価で、大きな喜びの瞬間があります。それは、信号が疎通する、つまり送ったデータがエラーせずに受信できた瞬間です。単純な回路よりも、複雑で要求されている特性が厳しい時はその喜びは何ともいえません。

そんな風に感じる私は・・・少し変なのかも知れないです(汗)

さて、信号が通ってエラーが無くなったと良く喜びますが、本当にエラーは無くなったのでしょか?

実は残念なことに、エラーは無くなっていないのです。エラーの発生確率がすごく低いので、たまたま実験室で見ている時はエラーが出ていなかっただけ・・・なのです。いやそんなはずは無いと言う方もいるかと思いますが、、、1年後、20年後、100年後もエラーは絶対にしないと言えるでしょうか?

エラーとは簡単に言うと、”1”であったはずのものが”0”になってしまうこと(またそれの逆)です。

そもそも、”1”とか”0”とかは人が決めたものであって、自然のままの信号は”1”も”0”も無く、連続しています。

また、世の中の信号には必ず雑音が混じっています。熱雑音、ショット雑音、フリッカーノイズ(1/fノイズとも言います)が主なもので、物質に温度があれば必ず雑音が混じっています。雑音は乱数なので、その量がどこまで増えるかは・・・確立の問題となるのです。

“1”が雑音で時々”0.9”になっても閾値が”0.5”だったら”0”と誤ったりしないのですが、雑音の量が非常に稀に、何十年に1度だけ、ほんとに偶然に偶然が重なって、0.499999になってしまったら”0”とエラーするのです。

長距離飛んできた電波や光は、信号が非常に小さくなってしまっているので、雑音に埋もれています。

なので、携帯電話やデジタルテレビでは、会話や画像が途切れてしまったりしないように、色々な保護やエラー訂正機能が組み込まれています。気づかないだけで内部でエラーは発生しているはずです。エラー訂正機能があるのなら、問題ないということになりそうなのですが、この訂正機能も訂正前のエラーが手におえないほど多くなったら時々訂正に失敗してエラーしてしまいます。

電子回路や装置は誤ってはいけないので100%を求められるのですが、どんなに頑張っても完璧に100%エラーをなくすことは出来ません。こう言うと、”そんなのはちゃんと回路設計が出来ないいい訳だ!”とおっしゃる方もいるかもしれないです・・・・が、電子回路も自然の一部なのですから、必ず間違えるのです。大事なのはそのエラーを予め考慮し、エラーが発生したときに使う人が気が付かない様にしておくこと、が重要なのではないかと思うのです。

次回は、、、”アナログの回路図の記号”について書いてみたいと思います。 (美斉津)