ディー・クルー・テクノロジーズ Blog

bookmark_borderエミッタフォロア(その3)

今回は「エミッタフォロア(その3)」です。

前回はエミッタフォロアの出力インピーダンスを計算しました。今回は入力インピーダンスを計算してみたいと思います。

エミッタフォロアの入力インピーダンスを計算する

等価回路モデルを確認する

この等価回路から以下の関係式が導き出せます。

等価回路図から関係式を導く

これらを整理して、Vbとibの関係を求めます。

なので前回の式(A)と合わせると、Vbは以下のように表せます。

入力インピーダンスとは、ibが変化したときにどのくらいVbが変化するかという事なので、

を求めればよいことになります。つまり

となります。ここで、

を代入すると、

となります。インピーダンスの大きさは、

です。この式でω→0とすると、

ω→∞では、

つまり、直流では入力インピーダンスは無限大に、高周波ではR+ZLになると言っています。

回路図Simulationから結果を確認する

今回の最初の回路図のSimulation結果を下の図に示します。

等価モデルで計算したとおり、高周波ではR+RLになっていますが、低周波では無限大にはなっていません(^_^;

今回のモデルでは順方向電流増幅率βを考慮していないためなのですが、そのモデルでの計算は結構面倒な予感がしますので、別の機会で実施したいと思います。

次回は、PLL関連について触れてみたいと思っています。

bookmark_borderエミッタフォロア(その2)

今回は「エミッタフォロア(その2)」です。

入力インピーダンスとか出力インピーダンスを計算する

前回はエミッタフォロアがピーキングを出すことを計算で求めてみました。今回はエミッタフォロアの入力インピーダンスとか出力インピーダンスを計算してみたいと思います。前回の回路と等価モデルを再び使います。

等価モデルを見る

この等価回路から以下の関係式が導き出せます。

回路の関係式を導く

これらを整理して、Veへの伝達関数を求めます。

となります。と、ここまでは前回と同じです。

エミッタフォロアの出力インピーダンスを求める

エミッタフォロアの出力インピーダンスを計算する上で、負荷のZLは不要なのでZL→∞とします。

出力インピーダンスとは、負荷電流が変化したときにどのくらいVeが変化するかという事なので、を求めればよいことになります。つまり

となります。ここで、を代入すると、

となります。インピーダンスの大きさは、

です。

この式でω→0とすると、

ω→∞では、

つまり、直流では出力インピーダンスはに、高周波ではRになると言っています。

出力インピーダンスの計算結果を回路図で確認する

今回の最初の回路図のSimulation結果を下の図に示します。

等価モデルで計算したとおり、低周波では、に、高周波ではRになっています(^_^)

エミッタフォロアは、出力インピーダンスが周波数と共に高くなってきます。つまり、インダクタと似ていますので、不用意にコンデンサをつけると”共振”が起こり、エミッタフォロアの伝達関数にピーキングが生じます。

これは、前回”エミッタフォロア(その1のやり直し)”で計算で求めましたが、その裏づけにもなっています。

次回は、今回使ったモデルや計算式(A)を使って、エミッタフォロアの入力インピーダンスを計算してみたいと思います。

bookmark_borderエミッタフォロア(その1-2)

今回は「エミッタフォロア(その1-2)」です。

エミッタフォロアがピーキングを出すことを計算で求める

エミッタフォロアは主にバッファとして使う便利な回路ですが、ときどきピーキングを出して(時には発振して)

僕らの頭を悩ませてくれます。特に負荷が容量性(コンデンサがついている)の時は危険度が増します。

前回は、計算の途中までしかできてなかったので、今回はそのやり直しをしたいと思います。

今回は少しモデルを簡単にしました(じゃないと計算力が足りず、解けそうにないです)

エミッタフォロアの周波数特性Simulationを見る

上の図は、エミッタフォロアの周波数特性をSimulationしたものですが、負荷容量を変えるとピーキングが発生します。

等価モデルを使って再説明する

その仕組みについて、等価モデル(下図)を使って説明してみたいと思います。

前回よりも楽にエミッタフォロアの関係式を計算で求める

この等価回路から以下の関係式が導き出せます。

これらを整理して、Veへの伝達関数を求めます。

となります。Vb => Veの利得を求めると、

ここで、 を代入すると、

となります(・・・前回よりだいぶ簡単になりました)。

利得の大きさは、

です。

補足:複素関数について

複素関数で、分子と分母の実部と虚部をそれぞれ2乗すると、大きさの2乗になります。

この式で、分母が最も小さくなるのは、なので、このときに利得は、

になります。

例えば、CL=Ci=10p、R=100Ω、gm=10mA/26mV=384mSの場合、

となって、トランジスタを使ったシミュレーションと一致します(・・・よかった(^_^;)

次回は、今回使ったモデルや計算式(A)を使って、エミッタフォロアの入力インピーダンスや出力インピーダンスを計算してみたいと思います。(美斉津)

bookmark_borderエミッタフォロア(その1-1)

今回は「エミッタフォロア(その1-1)」です。

エミッタフォロアとは?

エミッタフォロアは、別名コレクタ接地回路とも言います。これはコレクタ電圧が動かない(つまり接地している)からそう呼びます。他にベース接地やエミッタ接地と言った物がありますが、その話は別の機会にするとして、今回はこのエミッタフォロアについて話してみます。英語で書くとemitter follower、直訳は”エミッタが従う”で、動作をそのまま名前にしています。

エミッタは誰に従うかと言うとベースです。ベース電圧が上がるとエミッタも上がり、下がると下がるのでこの回路はバッファとして使うことが一般的です。

上の図で、出力電圧は

   出力電圧(VE)=入力電圧(VB)- ベースエミッタ間電圧(約0.7V)

とラフに書けます。ベースエミッタ間電圧は電流や温度で変わりますが、大きな変化はしないのでほぼ固定電圧がオフセットとして入っていると思えば、理解は簡単になります。

(エミッタ電流が減ってくると様子が変わりますので、ここでは十分なエミッタ電流が流れているとして下さい)

入力側は少ないベース電流(Ib)しか流れませんからインピーダンスが高いです。その反面、出力側のエミッタ電流(Ie)はIe=(1+β)×Ibとなり、大電流がながれてインピーダンスは低くなります。

センサー等の敏感なデバイスをそっと触り、その電圧を50Ωの測定器や負荷が複数並列に繋がったインピーダンスの低い回路に入力する時に使います。(オシロスコープにつなげて使うFETプローブは、FETを使ったソースフォロアになっている事が多いです)。

ピーキングや発振で悩ませることがある

この便利なエミッタフォロアは、ときどきピーキングを出して(時には発振して)僕らの頭を悩ませてくれます。

特に負荷が容量性(コンデンサがついている)の時は危険度が増します。

上の図は、エミッタフォロアの周波数特性をSimulationしたものですが、負荷容量を変えるとピーキングが発生します。

コンデンサは負荷に1つしかないのに不思議な感じがします。が、トランジスタの中のコンデンサが効いているのです。

等価モデルでエミッタフォロアの仕組みを知る

それでは、最も簡単な等価モデル(下図)でその仕組みを説明してみます。

ベース電圧とエミッタ電圧、ベースの内部電圧の関係式を作成する

ベース電圧VBとエミッタ電圧VE、ベースの内部電圧VB2の関係は、以下の関係式になります。

ここで、記号”//”は並列を意味し、Zbe=Cbe//Rbeとします。

コレクタ電流(Ic)は、電圧依存電流源G1の利得をGmとすると

で表せます。ベース電流Ibは

となります。エミッタ電流(Ie)とエミッタ電圧(VE)は以下の関係にあります。

Ib,Ie,Icを消して、VEをVBについて整理して見ると、

結構大変そう(汗)

となります(汗、汗)。

分母にZbe×ZLがあると言う事は、複素数のjω同士の掛け算があると言う事なので、分母<分子となる事を意味します。つまり、VE>VBとなる場合(ピーキング)があると言う事です。。。すみません、納得できないと思いますm(_ _)m

ここから先は、ちょっと面倒な計算をしないといけないので、次回「エミッタフォロア(1-2)」で説明したいと思います。ではまた。