ASIC(Application Specific Integrated Circuit)は、特定用途や顧客仕様に合わせて最適化されたカスタムLSIです。
回路・アーキテクチャをゼロから設計することで、高速処理・超低消費電力・小型化・コスト最適化を実現。
「ASICとは?」「FPGAやCPUとの違い」「導入メリット・選定ポイント」「開発フローや事例」まで、ASIC活用を検討される方へ技術的な視点でわかりやすく解説します。
ASICは、用途特化設計により高性能・低消費電力・量産コスト低減を実現します。
FPGAは柔軟性・試作性、CPUは汎用性とソフトウェア資産の活用が強みです。
各方式の選定は、量産規模・消費電力・開発期間・仕様変更有無などの条件に応じて最適化されます。
項目 | ASIC | FPGA | CPU |
---|---|---|---|
設計自由度 | ◎回路・アーキテクチャからフルカスタム設計。用途に応じて最適化可能。 |
○論理回路単位で柔軟に構成。標準素子で制約あり。 |
×既製アーキテクチャ採用。ソフトウェアのみで拡張。 |
性能(処理速度) | ◎用途専用設計で最高速・リアルタイム処理を実現。大規模並列・専用回路に強い。 |
○並列処理・カスタマイズで高速化可能。ASICに比べるとやや劣る。 |
△クロック動作・シリアル処理中心。一般的なアプリや制御用途向け。 |
消費電力 | ◎回路最適化と無駄排除で省電力設計。バッテリー駆動にも最適。 |
△汎用素子ゆえ最適化は限定的。用途によっては大きくなる場合も。 |
△汎用設計のため最小化しにくい。 |
開発期間 | △設計・試作・評価を含めて数ヶ月〜1年以上。量産前検証も必要。 |
◎設計後すぐ実装・検証が可能。短納期・試作向き。 |
◎既製品選定のみで即使用可。 |
開発コスト | ×初期費用・マスク代が高額。量産効果で1個あたりコストは最安。 |
○少量・試作なら低コスト。大量生産ではコスト増。 |
◎既製品活用で最小限。量産品として経済的。 |
柔軟性・変更性 | ×設計後の仕様変更不可。将来拡張には再設計が必要。 |
◎設計後でも書き換え・仕様変更が自在。 |
○ソフトウェア更新で拡張可。ハード自体の変更不可。 |
量産性・コストパフォーマンス | ◎量産規模で圧倒的なコストメリット。 |
△少量・多品種に最適。量産時は割高。 |
○標準品として広く利用。 |
代表的用途 | 通信・画像処理・自動車・医療・IoT・高性能組込機器等 | 試作評価ボード・研究開発・特殊制御・プロトタイピング | パソコン・スマホ・家電・汎用制御システム |
※ASICは量産時のコストメリットと高性能化を両立でき、FPGAは開発初期・仕様検証に最適、CPUは汎用性・即応性が最大の強みです。「どれを選ぶべきか」は用途・開発規模・将来の拡張性によって最適解が異なります。お気軽にご相談ください。
FPGAの詳細は こちらのFPGA設計サービス解説ページ もご覧ください。
分野 | 用途例 |
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画像処理・AI | カメラモジュール、AIアクセラレータ、映像信号処理 |
車載・産業 | ADAS/自動運転、各種センサフュージョン、モーター制御 |
通信・IoT | 基地局・ゲートウェイ、エッジAI、暗号化デバイス |
医療機器 | 超音波診断装置、バイタルセンサ、画像解析エンジン |
研究・次世代開発 | FPGAからの移行試作、カスタムプロトコル検証 |
ASIC開発は、要件定義→論理設計→物理設計→シミュレーション→プロトタイピング→テスト評価→量産の流れで進行します。
高度な回路最適化、量産品質保証、FPGAプロトタイプからの移行までワンストップ対応が可能です。
当社は高性能カスタムLSI(ASIC)の開発・設計受託で豊富な実績とノウハウを有しています。
医療、車載、産業、IoT、ARなど多様な分野の開発経験に基づき、超音波診断用LSIやARグラス用液晶ドライバーなど、先進技術の課題解決を多数実現。
アナログ・デジタル混載、低消費電力設計、セキュリティ機能統合、量産品質保証までトータルサポートします。
ディー・クルー・テクノロジーズは、多様な業界・用途でのASIC開発実績があります。
ここでは実際の開発事例から、「医療」「AR/IoT」など幅広いニーズに応えたカスタムLSIの導入効果をご紹介します。
●事例1 「ワイヤレス超音波プローブ用 LSI」
課題
健康診断などで使われ“エコー”と呼ばれる超音波診断装置は、手で持つプローブと診断装置本体は太いケーブルで接続されています。このケーブルが邪魔なので無線化したいと言うニーズがあり、開発したLSIになります。
無線化を実現するためにはバッテリーで動作する必要があり、低消費電力化はもちろん、プローブを手で持ちやすい大きさにするための小型化がLSI開発の課題となります。
解決策
保有しているアナログ設計技術とデジタル設計技術との融合により、従来技術では不可能と言われていた低消費電力化を実現しました。また、デジタル回路とアナログ回路の間のクロストークを抑える細心のレイアウト設計とカスタムWCSP(Wafer level Chip Scale Package)の開発を行い、目標サイズを実現しています。
本LSIは医療用途だけではなく、非破壊検査など超音波技術を活用する装置に広くお使いいただけます。
●事例2 「AR向け透過型液晶(LCOS)制御ASIC」
課題
お客様は新規開発の透過型液晶(LCOS)を搭載したARグラスの開発を計画していました。
そのARグラスを実現するためには、必要な画像処理機能を搭載したLCOSを駆動するLSIが必須であり、開発依頼を頂きました。単に必要な機能を搭載するだけではなく、ARグラスに搭載可能な形状で実現することが課題でした。
解決策
目標のサイズや形状を実現するためには、デジタル回路の高度な配置配線(レイアウト設計)技術が必要になります。この技術を基に必要な画像処理機能(ガンマ補正、クロッピング、上下左右反転、拡大縮小など)を全て搭載し、目標サイズと寸法を実現しました。